トラベクテジン掲載記事の要約

アメリカ臨床腫瘍がん学会の雑誌に掲載された記事の要約を掲載します。

 従来の抗がん剤治療が不良だった転移性脂肪肉腫や平滑筋肉腫にトラベクテジンやダカルバジンを使用-その有効性と安全性:第III相無作為多施設臨床試験の結果(ジョージ・D・デミトリ氏他)

 摘要

 目的 この多施設研究は、トラベクテジンとダカルバジンを進行した脂肪肉腫と平滑筋肉腫の患者(事前にアントラサイクリン化合物と少なくとももう1種の全身治療を行っていることが条件)に使用した初の第III相試験です。

 患者と方法 患者は無作為に2対1の割合で選ばれ、トラベクテジンとダカルバジンを3週間に1回静脈注射されました。第一の終了点は全生存期間(OS)、第二の終了点は病勢コントロールである無増悪生存(PFS), 増悪までの期間、奏功率、効果持続期間に加え、安全性や患者から報告のあった病状のスコアも加味されています。 

結果 518人の患者が登録し、無作為にトラベクテジン(345人)とダカルバジン(173人)に割り当てられました。最終的なPFSの分析によると、トラベクテジンは病気の進行や死のリスクがダカルバジンより45%少ないという結果になりましたし(トラベクテジンとダカルバジンのPFSの中間値は4.2対1.5カ月;ハザード比0.55; P < .001)、すべての事前に計画されていたサブグループ分析でも有効性が観察されました。OSの中間分析では(64%統計分析済み)、死のリスクがトラベクテジンでは13%少なくなっています。(トラベクテジンとダカルバジンのOSの中間値は12.4対12.9カ月;ハザード比0.87; P = .37) 安全性では、どちらもそれぞれの特性毒性と一致した結果で、もっとも一般的なグレード3から4の薬物副作用は骨髄抑制とトラベクテジンの注射によるトランスアミナーゼの一過性上昇でした。 

結論  過去の抗がん剤治療での失敗を経験してきた進行した脂肪肉腫や平滑筋肉腫の患者には、トラベクテジンは従来のダカルバジンの比べて有効な病勢コントロール力があることを示しています。進行した肉腫にとって病勢をコントロールすることが医学的に重要な最終点であることから、この研究はトラベクテジンをこれらの悪性腫瘍に使用する治療を支持する結果となっています