はじめに
がんは遺伝子変異に起因する疾患です。
同じ「がん」と分類されても、原因となる遺伝子変異は様々あり、対応する薬剤も異なります。原因となる変異等を特定することで、より効果が高い薬剤を選択できる可能性があります。(1)
技術の進歩により、次世代シークエンサーとよばれる高速の解析装置を用いて、病気の原因となる多数の遺伝子を一度にまとめて調べることができるようになりました。この遺伝子パネル検査によって、これまでわからなかった遺伝子変異が発見されることもあります。また、患者さんの遺伝子変異の組み合わせから、より適切な治療を選ぶのにも役立つと期待されています。(2)
薬物療法に用いられる薬には、従来の抗がん剤(化学療法)、ホルモン剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤など作用の異なるさまざまな種類があります。
化学療法に使われる従来の抗がん剤は、細胞の分裂や働きを妨げ、破壊する効果があります。しかし、正常な細胞にも同様に作用するため、副作用が生じることも少なくありません。
これに対して、1990年以降に登場したのが「分子標的薬」です。がん細胞では、変異が起こった遺伝子の情報をもとにして、異常な働きをするタンパク質が作られます。分子標的薬はこの異常なタンパク質(分子)を標的として働きを妨げ、がん細胞に選択的に作用します。(3)
なお、遺伝子検査を行っても、患者さんの遺伝子変異に対応する治療薬がまだ開発されていない場合など、特定の治療が見つからないことも多くあります。その場合は一般的な治療を続けたり、治験に参加するなど、別の方法が検討されます。(2)