現在の治療法

 症例数が少なく、未だ標準治療が確立されていないのが現状です。そのため、現在は個々の症例に応じて、外科手術などの局所治療、抗がん剤や分子標的薬などを使った化学療法による全身治療が行われています。

 局所治療は、外科手術による腫瘍の摘出に加えて、放射線治療(骨など)、ラジオ波治療(肝臓、肺)、ガンマナイフ(脳)、凍結療法(腎臓、肺)、重粒子線治療など、近年その選択肢は徐々に増えつつあります。なかには、肺のラジオ波、凍結療法のように保険適用外となる場合もあります。2016年4月から、放射線療法の1つである重粒子線治療は、切除非適応の骨軟部腫瘍に限って保険が適用されるようになりました。

 全身治療は、腫瘍が手術による切除が難しい場所にある、手術後すぐの再発・転移、複数の箇所に転移がみられる場合など、抗がん剤や分子標的薬を使って行われます。最新のニュースとしては、なかなか新薬が出てこなかった成人軟部肉腫治療において、新たに保険適用されたVEGFRおよびPDGFR,c-Kitに対して阻害作用を持つ分子標的薬パゾパニブの有効性が期待されています。さらに2015年9月にはトラベクテジン,2016年にはエリブリンがわが国で保険適用となり,特に粘液型脂肪肉腫で有効性が報告されています。また、現存の治療薬以外に、新薬の治験に参加することも可能です。
  症状によっては、局所治療と全身治療を適宜組み合わせた治療を行ったり、手術後の補助療法として化学療法を取り入れるケースもあります。

 以上のように、治療の選択肢は増えつつあるとはいえ、症例数が少ないこと、そのなかでも腫瘍の組織型が細分化されており、個々の症例にマッチした治療を選択することが難しい状況にある現在の肉腫治療。標準治療ガイドラインの確立、専門医の育成が早急に、強く望まれています。

  軟部肉腫の情報については、国立がん研究センター、がん情報サービスを参照ください。
 https://ganjoho.jp/public/cancer/soft_tissue_adult/index.html