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成人軟部肉腫~忘れられたがん

 日本では従来、肉腫の専門医は小児科医と整形外科医にしか養成されてきませんでした。それぞれの専門は化学療法と外科治療です。小児科医は15歳以下の小児と少年期の患者を扱います。整形外科医が執刀するのは、骨、軟骨、四肢の筋肉や軟部組織に発生する肉腫の手術です。その多くは骨肉腫、軟骨肉腫、Ewing肉腫、滑膜肉腫、横紋筋肉腫、繊維肉腫などで、他に脂肪肉腫、平滑筋肉腫、悪性繊維性組織球腫(未分化多形性肉腫)、血管肉腫の一部です。これら肉腫の組織型と発生部位には好発年齢があります(上図)。

 この図から、専門医である小児科医と整形外科医が原発腫瘍の手術から再発転移腫瘍の治療までを一貫して担当できる肉腫の多くは、30代前半までに発生する肉腫であることが分かります。30代後半以降に発生する肉腫の多くを占めるのは、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、悪性繊維性組織球腫、血管肉腫、癌肉腫/間質肉腫などで、主として胸部、腹部内臓や後腹膜に発生する肉腫です。これらの肉腫は、原発腫瘍こそ臓器別の外科専門医が治療しますが、再発転移すると継続的な治療を受けられない場合も多く、そのような患者は「がん難民」と呼ばれてきました。

 肉腫は「忘れられたがん」と呼ばれますが、成人の胸部、腹部内臓や後腹膜の再発・転移肉腫こそが、本当の意味での「忘れられたがん」であるといえます。その数が日本全体でどのくらいになるのかは統計がありません。この点、米国MDアンダーソンがんセンター、サルコーマセンターの統計が参考になります。1996-2006年の肉腫5781例の統計では、胸部腹部内臓や後腹膜原発の肉腫が58%を占めています。日本でもこれらの肉腫が肉腫全体の過半数を占めるものと推定されます。日本で毎年新たに肉腫と診断される患者の数を約5000~8000人とすると、毎年およそ3000~5000人の軟部肉腫の患者が発生している計算になります。